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治郎さんが上司
眼鏡喜之助がその部下
Djangoさんは下っ端

という前提のもと



「喜之助さんはどう思いますか」

この角度だと伸びたブロンドの前髪で少しその怖い顔が隠れる。
先ほどから声を発していない喜之助は、腕と足を組んだまま眉間にしわを寄せている。
角治郎が上目づかいにしかめっ面を覗き見ると、書類を確認してからこちらを向いた。
この、すべてを見通しているような鋭い目つきが苦手だ。
自分の立てた作戦にたくさんの穴があることがわかっているような目。

「…いいと思うわ。ただ、二手に分かれて両側から行った方が早くないかしら」

戦力の分散を避けるため
そう口を開きかけて言いよどんだ。
なにせ、この人は単独でウロボロスに行っても欠伸をしながら帰ってくるような人種だ。
と、角治郎は確信している。
女性であるにも関わらず、彼女の腹部や腕には自分のそれよりいっそ美しいほど筋肉がついていた。
ここでは男女の区別など無いに等しいが。
いや、それ以前に、自分に筋肉が存在することさえ疑わしい。
この人のような力があれば、自分は…

「分かれるとなると?お前と、俺とジロで2人、か?」

別の声に意識を引き戻された。
コの字に並んだソファの左一辺…喜之助の向かいに座る、全身白い男が頭をかいた。
こちらは喜之助と対照的にひょろりとしている。
それでもロングブレードを振り回し、飛び跳ねて戦うのが得意なのだから驚きだ。
彼─Djangoが意見を求めるように角治郎を見やる。
急に恥ずかしくなってから笑いが漏れた。

「そう…ですね。
 喜之助さんが先にエンゲージしても単独で牽制できるでしょうし、俺らは素早く駆けつけられます。
 俺らが先にエンゲージしてもDjangoさんが前衛になってくれれば大丈夫…かな?」
「かな?…って…俺じゃ頼りないってか!!いや、否定はしねぇけど!!」

自虐的なことを言っているにも関わらず、気にならないかのように笑うDjangoは本当に明るい。
3人の中で最も経験は浅いが精神面では一番強いと思う。
最年長であるからか、はたまた単にそういう性格だからかは解らないが。
自分もこんな明るい性格であるなら、もっとうまく友達を作れるだろうに。
まだまだ多感な年ごろの角治郎はそう思わざるを得なかった。



1人で言って1人で笑うDjangoを呆れかえって眺め、喜之助は目をぐるりと上に回してソファにもたれかかる。
全く、この男は本当に締まりがない。
今までどうやって生きてこられたのかさえ、時々不思議に思うほどだ。
ただ、なぜだろう、こんないい加減なやつの周りには人が集う。
きっとこれが“人がいい”というものなのだろうか?

「…とにかく、二手に分かれる、ということでいいのかしら?
 付近には小型種しかいないようだし、問題ないと思うのだけど」
「そうだな。確かに効率はいい。発見次第、端末で連絡ってとこか、ジロ」

Djangoがあっけらかんとしていると言えば、上司にあたるこの小さい男…
まだ子供の時期を脱したばかりの…は真逆だろう。
本当にこれでもゴッドイーターかと疑うほどの小心振りで、いつもおどおどと目線を泳がせている。
Djangoも無論そうだが、角治郎こそ今まで生きてこられたのが不思議に思う。

「えっ?!あ、はい、お二人が大丈夫なら、大丈夫…」
「ったく、しっかりしろや、リーダー」

Djangoが体ごと倒れこみ、伸ばした手で角治郎の背中を思い切り叩いた。
叩かれたほうは“ぷげら!”と奇怪な叫び声をあげて難色を示した。
これでもリーダー、上司、ゴッドイーター。

「…頼むわよ、角治郎」
「…はい」

角治郎が弱々しく笑って答えた。
昔なら、こんな貧弱そうな男など、Djangoのようにふざけた男など、襟首を掴んで根性を叩きなおしていただろう。
しかし今では…こんな奴らでも戦えることを知っている。
心底頑張って生きていることを。
そしてこんな奴らといて楽しいと思っている自分にも薄々気づいていた。



Djangoは仕事柄、人の気持ちを察することに長けている、と自分では思っている。
しかし何を考えているのか未だによく解らない、この年がら年中色黒薄着の女性は強敵だった。
その喜之助がくすりと笑った気がした。
角治郎を引っ叩くべく寝そべった体勢のままちらりと伺うと、微かに笑みが浮かんでいる。
いつも無表情、むしろ険しいイメージしかなかったのを少し修正することになりそうだ。

「まァ…なんだ、楽しそうなお仕事になりそうだな」

うはは、と笑い声を立てて追加分の気合を角治郎に叩き込む。
あいつなりに、楽しんでいるのではないかと疑い始めた。

「いッ!!痛いですってば!!」

一方こいつは…
いつもおどついていて、仲のいい同世代の友人といるときだけ活発な笑みを見せる。
普段は弱々しい、頼りないとさえ思わせる少年だが、しかし心の中では精一杯頑張っている奴だと思っている。
強くありたいと願い、強くあるんだと決意している、そんな人間だと。
とどめに角治郎の後頭部を小突いて姿勢を正す。
2人の変わった上司のもと、自分も“こうありたい”と思わせる人間にならないとな、と心の中でつぶやいた。

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